部活動の地域移行について 豊橋市の取り組みと展望

近年、文部科学省は『中学校部活動の地域展開』を推進しています。これは、学校単位で部活動として行われてきたスポーツ・文化芸術活動を、地域全体で関係者が連携して支え、子どもの豊かで幅広い活動機会を保障するという政策であり、『新しい形での活動環境の創出』を目的としています。決して『中学校部活動の終焉』ではありません。このような国の施策を受け、現状はどのようになっているのか、また、私たちの住む豊橋市ではどのような方向性を持っているのかが気になるところです。そこで今回は、豊橋市内の中学校で長年野球部顧問を務められ、5年程前から休日には地域野球クラブのボランティア指導員としても中学生と関わり、部活動と地域スポーツクラブの両方に精通する豊橋市立豊城中学校の河合成始校長にお話を伺いました。

●今後の活動の形とは?
記者「この先、部活動がなくなってしまうのではないかと心配している保護者も多いようですが、今後どうなるのでしょうか」
河合先生「まず、部活動がなくなることはありません。現在、活動は週3回90分程度、土曜日は月に2回3時間程度となっていますが、2025年(令和7年度)9月からは平日の活動は変わらないものの、原則休日の活動はなくなります」
記者「では、週3回の活動も将来的にはなくなってしまうのでしょうか」
河合先生「今のところその予定はありません。休日は地域クラブや民間事業者などで多様な活動へ移行させるという形です。ただし、単純に地域で活動するのではなく、学校と地域が連携を取りながら、生徒たちの多様なニーズに対応できる環境を整えることが必要だと思います。この1年間でも、豊橋市の学校教育課を中心に、豊橋市スポーツ協会や豊橋文化振興財団、市役所内関係部局や民間業者などで構成される『中学校部活動検討特別委員会』で様々な議論が行われてきました。つまり、豊橋市としても国の施策に沿いながら、何が最善なのかを検討しているところです」

●多様なニーズに応えるための新たな取り組み
記者「生徒たちの多様なニーズに応じた環境整備について、具体的な取り組みはありますか」
河合先生「豊橋市の新しい試みとして令和7年4月から“拠点校部活動”という、生徒の活動場所を確保するしくみが運用されます。学校によっては希望する部活動がないケースがありますが、その場合、近隣中学校の部活動に参加できるようになります。また、現在の駅伝部のように、大会に向けて期間限定で活動する『臨時部活動』を運用している中学校もあります。これにより、他の部活動に所属している生徒も特定の期間だけ臨時部に参加することが可能になります。ただし、いずれも学校ごとの条件があるため、環境が整った場合に限り臨時部活動が設定されます。拠点校部活動については原則新1年生が対象となり、すでに保護者へ通知が出されています」
記者「例えば、サッカー部に所属する生徒が陸上部の試合に出場することも可能になるのでしょうか」
河合先生「在籍する中学校のルールや条件が揃えば県大会までは出場可能です」

●部活動の変化をどう考えるか
記者「こうした変化について、どのようにお考えでしょうか」
河合先生「部活動の地域展開は、部活動の在り方を見直す良い機会だと考えています。これまでは目標を掲げ、十分な練習量を確保し、結果を求める形式が主流でした。しかし、今後は時間が限られ、競技力を高めることが難しくなります。それでも、限られた時間の中で何ができるか、どう工夫すべきかを生徒自ら考え、実践するという学習の場へと変化せざるを得ないと思います。また、部活動は、単なる技術向上の場だけではなく、同級生や先輩・後輩との関係を築き、社会に出た時に役立つであろう、様々な経験を積む場でもあります。このことは部活動の本来の目的に変わりありません。ただ、これらの目的を部活動として学校だけが全てを担うのではなく、地域と連携しながら子どもたちのニーズに応えられる環境を整えることが大切です」

●地域クラブの指導者としての視点
記者「先生は地域野球クラブでボランティアをされていますが、地域指導者という立場から部活動の地域展開についてどうお考えですか」
河合先生「まずは学校側と地域が生徒を取り巻く情報等を共有し、連携することが重要だと考えています。例えば、学校側が地域クラブを紹介することは、地域クラブにとって一助になります。私の所属する豊橋中学軟式野球連盟では、日曜日中心の地域クラブ活動を土曜日に開催できるかどうかの調査を行いました。さらに、小中学校の教職員が本連盟に協力できる方法を模索しているところです。練習場所や道具の確保なども課題となるため、学校と地域クラブの連携は欠かせません。他にも地域指導者のスキルアップも今後の課題となるでしょう」

●文化部の地域移行について
記者「これまで運動部の話が中心でしたが、吹奏楽部などの文化部の地域展開についてはどうなっていますか」
河合先生「吹奏楽については、市内のいくつかの地域で学校外の活動を立ち上げる動きが出ています。また、市内中学生へのアンケートでは「単一の部活動だけでなく、休日には複数の活動をやってみたい」という声が多くありました。運動系の種目を複数組み合わせる、あるいは運動系と文化系活動の二刀流でいくなど、多様なニーズがあります。こうした子どもたちの選択肢を増やし、活動の幅を広げられる環境を作ることが大切です。小学校で実施されている“のびるんdeスクール”のような活動も検討中です」

●今後の大会運営について
記者「活動時間が限られる中で、大会などはどうなるのでしょうか」
河合先生「これまで通り開催されます。また、競技によってはクラブチームも中体連の大会に出場できる場合があり、その際はどのチームから参加するかを選択することになります」

●今回の取材で分かったこと
豊橋市では、部活動の地域移行を進める中で、拠点校部活動や臨時部活動など新たな制度を導入し、多様なニーズに対応できる環境整備を進めています。学校と地域が連携し、指導者確保や活動場所の確保を探索しながら、子どもたちにとって最適な部活動の形を模索しています。部活動は今後も続き、その在り方が進化していくことが求められています。

 

 

FALCO

関連記事